特定外来生物「セイヨウオオマルハナバチ」の監視活動はじめに「セイヨウオオマルハナバチ」(セイヨウ、学名Bombus terrestris)は1992年に導入が開始され、ハウス栽培の受粉を助ける昆虫として利用されています。1996年に初めて野外で自然巣が発見された後、急激に野外での目撃数が増えています。セイヨウの高い増殖力と競争力がもたらす在来生態系への懸念から、環境省は2006年セイヨウを「特定外来生物」に指定しました。 2007年には北海道庁による防除実施計画が策定され、東京大学保全生態学研究室と恊働で「セイヨウオオマルハナバチバスターズ」の活動を開始いたしました。2008年は297名の方から、53,690頭の捕獲情報が寄せられました。しかし、広い北海道。まだまだモニターのいらっしゃらない地域が大半です。 皆さんとの活動は、分布の実態を把握し、効果的な対策を考え、問題を解決するための何にも増しての力です。どうぞご協力をお願いいたします。 監視活動の基本方針図1. セイヨウオオマルハナバチの女王バチ、働きバチ、オスバチ(『マルハナバチハンドブック』より転載)。
セイヨウの見分け方北海道には、11種類の在来マルハナバチが生息しています。その中でセイヨウにちょっと似ているマルハナバチたちの見分け方をご紹介します。基本的には、お尻の白色、黄色と黒のしま模様のあざやかさでほぼ問題なく識別できます。 セイヨウオオマルハナバチ [外来種]黒い体に鮮やかな黄色のえりまきと、真っ白なお尻が特徴! 舌がとても短いため、花筒の長い花からは「盗蜜」をします。 在来のマルハナバチよりも体の動きが素早い傾向があります。 見つけたら教えて & つかまえてください! (写真はエゾオオマルハナバチです) エゾオオマルハナバチ&エゾコマルハナバチ [在来種]在来のマルハナバチですが、ともに「黒い体に黄色っぽい帯が3本」というセイヨウに似た模様をしており、よく間違えられます。 一番の違いは、「お尻が濃いオレンジ色をしていること」、そのため「えりまきよりもお尻の色が濃いこと」。セイヨウもときどき花粉でお尻が黄色かったりしますが、えりまきとお尻をセットで見れば迷うことはありません。 また、在来種全般にあてはまることですが、セイヨウよりも「トロい」傾向があります。ぜひ、観察してみてください。 エゾナガマルハナバチ [在来種]その名の通り、長い顔と長い舌が特徴です。 セイヨウ同様、黄色と黒の縞模様をもちますが、黄色い部分がセイヨウよりも多く、場所も異なります。黄色の色調もどちらかというクリーム色に近い感じで、セイヨウほど鮮やかではありません。 もっとも、こうした違いも飛んでいると分かりにくいものなので、山などで見かけると「どきっ」とするかもしれません。注意深い観察をお願いいたします。 ノサップマルハナバチ [在来種]道東の一部(根室・野付半島など)には、セイヨウにそっくりなノサップマルハナバチが生息しています。 黄色部分の色調はやや鈍いものの、黄色と黒の縞模様のパターンはセイヨウと同じです。女王バチとオスバチはお尻が黒いのですが、働きバチはお尻が白くなるので、セイヨウとの識別には注意が必要です。個体数がとても少ない種であるため、誤った捕獲が大きなダメージを与える可能性もあります。 道東地方での監視活動は慎重に!! セイヨウの探し方野外でセイヨウを目にするのは、多くの場合、彼らが花粉や蜜を集めるために花を訪れているところです。ハチの動きがゆっくりになるので、最もつかまえやすい瞬間でもあります。 では、セイヨウは実際にはどのような花を利用しているのでしょうか。2006年の調査では、訪花が確認された花は実に194種類にのぼりました。春先、越冬していた女王がよく利用していたのはエゾムラサキツツジなどのツツジ類、ムラサキツメクサ、エゾエンゴサク、菜の花(ハルザキヤマガラシ、アブラナなど)などでした。年間を通してみた場合、最も観察例が多かったのはムラサキツメクサであり、ラベンダー、コスモスなどの秋の花がそれに続きました。監視活動を行うにあたっては、これらの花がたくさん咲いている場所に注目するとよいでしょう。 表1. 2006年のセイヨウ監視活動における、セイヨウが利用した花ベスト10。 図2. セイヨウが好んで利用する花の例。左からラベンダー(訪花しているのはトラマルハナバチ)、エゾエンゴサク、ハルザキヤマガラシ、ヒマワリ。 セイヨウの分布拡大を防ぐためには、早いうちに巣を探して排除することも効果的です。 セイヨウは、ネズミの古巣などの地中のほか、家や倉庫の床下などもうまく利用して巣をつくることがわかってきています。「セイヨウオオマルハナバチの侵入」の項でご紹介したとおり、巣作りを始めるのは4〜5月頃ですが、実際に巣に気づくのは、たくさんの働きバチが出入りする7〜8月頃が多いようです。 表2. 2006年のセイヨウ監視活動で発見された営巣地点。
地中や床下の巣を掘り出すのは難しい場合も多く、刺されないための十分な準備なども必要ですが(昨年は、業者による駆除のご報告もいただきました)、新女王バチが生まれ始める前に対応ができれば、大きな効果が期待できます。
巣が大きく発達する前に発見できれば、対応も比較的簡単です。セイヨウが出入りしている場所がないか、ぜひ時々チェックしてみてください。また、2006年度の調査では、4〜6月に、車庫の中や通風孔付近などでうろうろしている女王バチ(巣探し行動)が多く確認されています。この時期にできるだけ多くの女王バチを捕獲することが、営巣を防ぐ一番の近道でもあります。 女王バチ捕獲へのご協力、重ねてお願いいたします! |
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