DIASにおけるオープンサイエンスの推進
データ統合・解析システム (DIAS)の大きな目標の一つに、データを基盤とした科学的なエビデンスに基づく社会を作るという目標がある。そのためには、異分野の研究者が集まってデータを共有し、データから価値を生み出す知見や技術を出し合うことによって、科学的な知見に基づく意思決定を助ける情報を提供する必要があり、この考え方は開かれた科学としてのオープンサイエンスの考え方にも深く関わっている。DIASは具体的には以下の点でオープンサイエンスとの接点がある。
1. オープンデータ
研究データの一部はオープンライセンスで公開し、研究者が自由に使えるようにする。またその他のデータは、いわゆる厳密なオープンデータではないものの、ライセンスのもとでデータへのアクセスを可能とすることで、これまで死蔵されていたデータの活用への道を開く。
2. データサイテーション
研究データを構築し公開し共有するというプロセスは、研究成果の再利用と再現性を促進するという観点から注目を集めるようになってきた。こうしたプロセスを実現する研究基盤として、DOIのような識別子を付与する機能や、データ論文とデータ引用を支援する機能などを実現する道を開く。
3. シチズンサイエンス
専門家だけではなく市民もデータの収集や分析のプロセスに参加することにより、専門家だけでは不可能な規模での収集を実現するだけでなく、市民がデータから知識を得ることで現状認識や意思決定などの高度なプロセスに参加する道を開く。
こうした活動を進めるには、専門分野の壁を越えるだけではなく、専門家とそれ以外のステークホルダーとの壁を越えることも必要になってくる。こうした超学際(trans-disciplinary)な研究方法もDIASの一つの特徴である。
たとえばセイヨウ情勢は、セイヨウオオマルハナバチという侵略的外来種の防除という活動を通して、市民と協働しないと難しい多地点における防除を進めると同時に、市民とも生態学的な知識を共有することによって活動の意義を高める活動である。その他の活動については、データ統合・解析システム (DIAS)を参照してほしい。
またオープンサイエンスを支える基盤についても研究開発と普及活動を進めていく必要がある。例えば、データに対するグローバルな識別子となるDOI (Digital Object Identifier)の付与や、データに対するアクセスの認証のための学認(学術認証フェデレーション)などに取り組んでいる。
DIASオープンサイエンス勉強会
DIASでは、こうしたオープンサイエンスの動向を把握し、オープンサイエンスの文化を作っていくために、メンバーの有志を募って「DIASオープンサイエンス勉強会」を開催している。以下にこれまでの開催履歴をまとめる。
1 | 2015-01-23 | JaLC実験プロジェクト、メタデータの調査、DOIの付与規則の調査 |
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2 | 2015-02-05 | メタデータの変換 |
3 | 2015-02-19 | 識別子の系統的な付与、データサイテーション |
4 | 2015-03-09 | JaLC実験プロジェクト進捗報告 |
5 | 2015-03-30 | JaLC実験プロジェクト進捗報告、国立環境研究所の取り組み |
6 | 2015-04-22 | JaLC実験プロジェクト進捗報告 |
7 | 2015-05-29 | JaLC実験プロジェクト進捗報告、ダイナミックデータサイテーション、DOIとバージョン問題 |
8 | 2015-06-23 | JaLCガイドライン |
9 | 2015-07-15 | レポジトリ評価、キュレーションサービス、メタデータ横断検索 |
10 | 2015-08-03 | メタデータ横断検索、インセンティブ |
11 | 2015-09-18〜19 | 合宿 |
12 | 2015-10-14 | JaLC実験プロジェクトまとめ、キュレーション |
13 | 2015-11-09 | 会議報告、国立国会図書館訪問 |
14 | 2015-12-17 | 会議報告、国立環境研究所の取り組み |
15 | 2016-01-25 | アイデアソン、利用規約、情報共有サイト、RDA関連イベント |
16 | 2016-02-24 | 会議報告、RDA、オープンサイエンス勉強会アーカイブ構想、ライセンス検討 |
17 | 2016-03-18 | RDA報告、オープンサイエンス勉強会アーカイブ、Scientific Dataへの対応 |
発表文献
- 北本 朝展, "DIASプロジェクトの取組み", ジャパンリンクセンター活用の為の対話・共創の場(第2回), 2015年02月 [ 概要 ]
- 北本 朝展, "オープンサイエンスの現状と地球環境学データ基盤の展望", 第110回地球研セミナー, 2015年05月 (招待講演) [ 概要 ]
- 北本 朝展, 川崎 昭如, 絹谷 弘子, 玉川 勝徳, 柴崎 亮介, 喜連川 優, "地球環境情報統融合プログラムDIAS データ共有に基づく社会課題解決", 情報管理, Vol. 58, No. 6, pp. 413-421, doi:10.1241/johokanri.58.413, 2015年9月 [ 概要 ]
- 北本 朝展, "オープンサイエンスへのコンバージェンス~同床異夢から共通認識を醸成するコミュニティの形成~", オープンサイエンスデータ推進ワークショップ, 2015年09月 (招待講演) [ 概要 ]
- 北本 朝展, 川崎 昭如, 絹谷 弘子, 玉川 勝徳, 柴崎 亮介, 喜連川 優, "地球環境情報統融合プログラムDIAS データ共有に基づく社会課題解決", 情報管理, Vol. 58, No. 6, pp. 413-421, doi:10.1241/johokanri.58.413, 2015年9月 [ 概要 ]
- 北本 朝展, "「巨人の肩」とデータサイテーション", 地球研コアプロジェクトFS 第1回研究会, 2015年10月 (招待講演) [ 概要 ]
- 北本 朝展, "「研究のバリア」を打破する研究基盤デザインと研究データ利活用", 第2回 SPARC Japan セミナー2015 (オープンアクセス・サミット2015) 「科学的研究プロセスと研究環境の新たなパラダイムに向けて - e-サイエンス, 研究データ共有,そして研究データ基盤 -」, 2015年10月 (招待講演) [ 概要 ]
- 北本 朝展, "オープンサイエンスのジレンマ~研究者共同体のインセンティブと結果オープン性へのモチベーション~", 第2回オープンサイエンスデータ推進ワークショップ, 2015年12月 [ 概要 ]
- 北本 朝展, "研究現場におけるオープンデータの進め方", 情報・システム研究機構シンポジウム「オープンサイエンスにおける研究データのオープン化」, 2016年02月 (パネルディスカッション) [ 概要 ]
- 北本 朝展, "研究データとオープンサイエンスに関する基礎的知識", 研究データとオープンサイエンスフォーラム~RDA東京大会における議論を踏まえた研究データ共有の最新動向~, 2016年03月 [ 概要 ]
- 北本 朝展, "「デジタル台風」におけるキュレーションとオープンサイエンス:持続可能なデータプラットフォームに向けた課題", 情報管理, Vol. 59, No. 5, pp. 293-304, doi:10.1241/johokanri.59.293, 2016年8月 [ 概要 ]
- 北本 朝展, "オープンサイエンスの動向と情報学分野へのインパクト", 電子情報通信学会技術報告, Vol. 116, No. 259, pp. 1-6, 2016年10月 [ 概要 ]
- 北本 朝展, "オープンサイエンスとサステナビリティ~データ駆動型サイエンスの鍵を握る持続可能なデータプラットフォーム~", 第2回北海道大学の国際競争力強化のためのオープンサイエンスワークショップ, 2016年11月 (招待講演) [ 概要 ]
- 北本 朝展, 山本 和明, "人文学データのオープン化を開拓する超学際的データプラットフォームの構築", 人文科学とコンピュータシンポジウム じんもんこん2016, pp. 117-124, 2016年12月 [ 概要 ] [ PDF ]
- 北本 朝展, "データキュレーションへの期待と課題:自然科学から人文科学まで", 九州大学ライブラリーサイエンス専攻シンポジウム「オープンデータとデジタルヒューマニティーズ」, 2017年01月 (招待講演) [ 概要 ]
- 北本 朝展, "ディープラーニングとオープンサイエンス ~研究の爆速化が引き起こす摩擦なき情報流通へのシフト~", 第3回 SPARC Japan セミナー2016 「科学的知識創成の新たな標準基盤へ向けて : オープンサイエンス再考」, 2017年02月 (招待講演) [ 概要 ]
- 北本 朝展, "研究データへのDOI付与が意味すること ~DIASにおける経験を踏まえて~", 科学データ研究会・WDS国内シンポジウム, 2017年03月 [ 概要 ]