【アーカイブ版】セイヨウ情勢 : 市民参加による外来種(セイヨウオオマルハナバチ)モニタリングと対策のためのリアルタイム情報共有サイト

- 最終更新日: 2015年12月28日
本サイトは更新を終了しました。北海道生物多様性保全活動連携支援センター(HoBiCC)が運営する新「セイヨウ情勢」をご覧ください。

【過去の情報】巣が続々と見つかっています

発信日:2008年07月31日
発信者:菊池 玲奈
前回のマルハナ通信からちょっと時間が経ってしまいましたが、
皆さんお元気でお過ごしでしょうか?
東京は相変わらず暑い日が続いています。「6月初旬からずっと、30度前後の日々が
続いています」とお伝えしていましたが、ここ数日、急にキャンパスでセミの声がにぎやかに。
セミたちにとっても、夏がやってきたようです。
 
☆ 巣の情報が続々と届いています! ☆
 
7月後半に入り、巣の情報が続々と届けられるようになりました。
これまでの報告数は15。昨年の7月の報告数は7つ。セイヨウの巣が増えている、という
ことより、皆さんがしっかり見て下さっているからこそ、ですね。
保健所に情報提供を依頼し、ボランティアで対応して下さっている方。
北海道庁の方のご協力で、今年は、巣の駆除を担当される業者の方からも、情報を
ご提供いただいています。本当にありがとうございます。
 
いくつかの巣は、モニターの皆さんが自ら対応して下さっています。下記にいくつかご紹介を。
 
<恵庭市・民家の床下に営巣!>
 
 
いつもご近所ぐるみ、家族ぐるみでハチを追いかけて下さっているEさんグループ。
昨年の河川敷での発見に引き続き、7月12日、ご近所の民家の床下での
営巣を発見!
 
「換気口から出入りするハチを待ち伏せして捕まえました。14:30~19:00まで
みんなで頑張りました。働きバチ143頭捕獲です。明日もみんなで早朝から
頑張ります!」
「今日は朝7時にみんなで集合しました。7:00~12:00まで監視して90頭を
捕獲しました。12:30~17:30の監視では、15:00までで5頭しかとれず、
17:00まではゼロです。本日の巣での合計はすべてワーカーで95頭でした」とのこと。
さらに「94頭目には、とても小さな個体で、羽がとても弱い「キミ!内役バチでしょ?」
というような個体でした」とのこと。
うーん・・・私、大学に所属はしていますが、観察、完全に負けてます・・(お恥ずかしい
話ですが、自分で巣をみたことがありません・・・)。
 
マルハナバチの働きバチは、幼虫の時に食べた花粉の量で体の大きさが決まります。
最初に生まれた働きバチは、他に働いてくれる仲間がいませんので蜜や花粉を集めに
外に出かけていかざるを得ませんが、その後生まれる小型の働きバチは、外には出かけず、
幼虫の世話や巣内の衛生管理など一生を巣の中で過ごす「内役バチ」になります。
Eさんグループが採餌に出かける働きバチを全て捕獲してしまったので、やむにやまれず、
小さなハチも出てきたのでしょうね・・・。
 
その後、7月19日にはご近所の方から「床下の巣」の報告があり、対応して下さったとのこと。
こちらの巣では30頭の新女王が捕獲され、今年はすでに新女王が生産されている、と
いうことが、巣からも明らかになりました。
 
<旭川市・小学校の物置下に営巣!>
 
小学校の副校長先生、バスターズ3名の皆さんほかで協力して掘り出して下さいました。
 
 
ビニールなどをうまく巣材にしてあるのがわかります。これを取り除くと・・・
 
 
上に穴が空いているのは、羽化後のまゆを「蜜つぼ」として利用しているもの。
きらきらしているのが、蜜です。マルハナバチは、営巣場所の空間にあわせて
巣をひろげていきます。
 
ころころした卵形のものが、卵室、幼虫室、あるいはさなぎの入っている繭など
です。最初の頃は複数の幼虫がひとつのお部屋で暮らしていますが、幼虫の
最終段階(老齢幼虫、と呼びます)になると、個室暮らしとなり、繭へと変化
していきます。
 
ちなみに、このあと、同じ小学校の敷地内からもう1つ巣が見つかったそうです。
 
 
<稚内でも巣がみつかりました!>
 
こちらもモニターさんが、未使用の市営住宅の床下への出入りを発見!
宗谷支庁のかたも一緒に掘り出して下さいました(お写真は宗谷支庁から
お送りいただきました)。
 
 
赤い丸のついているところから出入りしていたそうです。
 
 
やっぱりビニールなどを上手に巣材として利用しています。
 
この巣を掘り出してから、ご近所のお宅のお庭へのセイヨウの飛来が一気になくなった
そうです。
 
よく「どうやったら巣を見つけられますか?」というお問い合わせをいただきますが、
まずは床下などへの出入りのチェック。それからもうひとつ参考?になるのが、マルハナバチの
「帰る方向」をチェックすること、です。
花から花へと飛び回るときと異なり、マルハナバチが巣に帰るときは、「一直線、最短距離」
で飛んで帰ります。エサを集めに来ていたマルハナバチたちが、同じ方向に一直線に飛んで
いくことが続いたら、そちらに巣があるかも!・・・とはいっても、働きバチが採餌に活動する
距離は数キロ、といわれていますので、必ずしもすぐ近くにある!というわけではないので
しょうが・・・もしよかったら、参考になさってみて下さい。
 
今年は沢山のモニターの方が「巣掘り」に挑戦して下さっていますが、中にはやはり刺される
方がいらっしゃいます。特に、新女王バチを生み出す時期は、巣にとっても一番大切な時期
ですし、働きバチの数もとても多いので、いつもより攻撃性も高くなっていると思われます。
くれぐれも無理をしすぎず(といいつつ、新女王バチが生まれる前に駆除してほしい、というのも
現実問題でジレンマですが・・・)、場所によっては殺虫剤などもうまく利用して、対応して
ください。今のところ大きな事故はありませんが、やっぱりアレルギーなどの問題もありますので・・・。
どうぞよろしくお願いいたします。
 
 
☆ 皆さんのお便りから ☆
 
皆さんからいただく報告書やメール。1通1通にこめられた、地域の自然への思いや、セイヨウの
命をとる、ということに対する逡巡、鋭い観察眼や、思わぬ活動の工夫。いつもいつも感動したり、
考えさせられたり、勉強したり・・・。本当にありがとうございます。
単なる「セイヨウの捕獲」を超えて、皆さんが活動を育てて下さっていること。このことが、地域の
自然にとっては、何よりの宝物だと思います。いくつかご紹介させていただきますね。
 
<セイヨウは逃げ方を学習する!?> 7月11日・七飯町Oさんより
「捕獲には捕虫網とスーパーの袋とを併用しているのですが、頭からかぶせても袋の下の方から
するりと逃げられ、妻と「今年のハチはすっかり学習していて、逃げるのが上手になっている」などと
冗談を言い合っています」
 
菊池より:これ、今年たくさんの方に言われています。江別市のMさん、雨竜町のSさん・・・皆さん
「今年のハチは下から逃げる」と。うーん「網をかぶせれば上にのぼる」といわれているんですがねえ・・・。
 
<マルハナバチへの思い> 
7月10日・南幌町Sさんより
「9日富良野のラベンダー園にいきました。一緒に行った友人からは、何見てるの?ラベンダー見に
きたのでしょ。私の目は、マルハナを探しているのです。残念ながらセイヨウを2匹目撃してしまいました。
救われたのは、エゾオオマルがセイヨウより多かったこと。他に細身のマルハナが懸命に蜜集めをして
いました」
 
7月13日・恵庭市Sさんより
「10日の日に新女王を1匹捕まえました。お便りを拝見していたので、やっぱり!と、思いましたが
驚きです。もっと気になったのが、越冬した大きな(腹部が大きいような気がしました)エゾの女王蜂が
土の上をウロウロして入り込めそうな所を探しているようだったのです。あまり元気そうではなく。
春先にエゾの女王を結構見かけた割には、働き蜂をあまり見かけません。巣にできそうな所を横取り
されているのでしょうか・・・?エゾはトロイですから。
 
<マルハナバチの観察> 7月15日・美唄市Fさんより
「同じ庭にポピーとアスパラガスがあるが、ポピーで花粉集めしている個体は黒色の花粉を、
アスパラガスで集めている個体は黄色の花粉をつけている。同じ個体が異種の花粉を集める
ことはないようである」
 
菊池より:これこそ、まさにマルハナバチの特徴で「定花性」といわれるものです。
マルハナバチは個体ごとに「この季節には、この花を使おう!」と決めて主にその種類の花を専門に
訪れるので、植物にとっては、同種に花粉を届けてもらえる頼もしいパートナーなのです。
 
・・・などなど、私一人で読んでいるにはあまりにもったいない!観察や言葉をたくさんいただきます。
なんとかして、こういう情報を皆さんにももっとリアルタイムにお届けできないかな、と、今、セイヨウの監視活動の
ホームページの充実化を進めています。
9月くらいまでには公開出来るかな・・・となると、シーズンはもう最後半になってしまうけれど。
でもぜひぜひ、皆さんにご覧いただきたいので、頑張りますね。
 
今日までにいただいた捕獲の状況、とりまとめの上、添付いたしました。
皆さん、ありがとうございます。今後ともどうぞ、よろしくお願いいたします!